「…詳しいことは何もわかりませんか。

 流石、最大級阻害反応。殆どそれからは何も解らない。

 …使命のために生まれて使命のために戦ってきた。

 そして…そうプログラミングされているから。

 …絶対に失敗できない。そして必ず成功させねばならない。

 そのために失敗に繋がる要素は排除しなければならない。

 …全て、解っていますよね、私の相棒、MAX-M」





「「排除プログラム05、直接戦闘開始」」













「十年…長いようで短い。」



ある町に舞い降りる一抹の赤い雪。



「…なぜ、こうやって戻りたくなったんだろう。」



赤い雪は十年の周期で降っていた。



「別に冥界から抜け出したかったわけじゃない。」



吹雪のように降り続けることもあった。



「ここが懐かしいわけでもない。」



しんしんと、ゆっくり降るときもあった。



「誰かが憎かった訳でもない。」



赤い雪が積もることもあった。



「誰かが好きだった訳でもない。」



一晩のうちに消え去ることもあった。



「やり残したことがあった訳でもない。」



だが、確実に赤い雪は振った。



「…そうだ。別に忘れた訳じゃない。」



そして、赤い雪が降る中で。



「誰かも覚えていない。」



毎回誰かが消えた。



「だから憎くも無い。」



人々は恐れはしなかった。



「好きでもない。」



赤い雪を見て全てを忘れてしまったから。



「ただただ、関心しただけだった。」



今回もきっと、誰かが消えるはずだ。



「そして、頂点にいることができなくなった。」



きっと。



「だから、冥の底で思い出していた。」



しかし、赤い雪を降らしている張本人がもしもいたとして。



「私を殺した技を。」



誰かを消した張本人がいたとして。



「私を殺したモノを。」



その張本人の気が変わったとしたら。



「私は真似した。」



そんなことを毎回思っていたけれど。



「そして、編み出した。」



その思いとは全くかけ離れていた。



「魂をも冥界から完全に消し去れた。」



毎回変わらない。



「閻魔にも打ち勝った。」



今回こそは…



「そして閻魔から世を行き来することを許された。」



何かしろ変わってくれないか。



「でも、何も変わらない両世にも愛想が尽きた。」



自分で変えたいとも思った。



「もう、消え去ろう、そう思った。」



しかし自分はただ傍観するだけ。



「しかし閻魔をも倒したこの奥義をも消し去るのはもったいない。」



何も変えられずに見ることしかできない。



「だから、この私の神霊を注いだ奥義を継ぐ。」



だから変わるのを待つだけ。



「そうしてから消えよう。そう思った。」



色々と変わるものはあったが、それは小さな小さな変化だった。



「でも、私の奥義を使いこなせそうな者は探しても探しても見つからなかった。」



だが小さな変化でも変わるものは変わるから、この赤い雪の一連をまとめようと思った。



「探してもいないなら、出てくるのを待つ。そうしてあの町に十年に一度だけ、現れるようになった。」



これで今回は一つ違った。



「生きていた頃は私は『紅の雪』、というように呼ばれていた気がした。」



きっかけにはならないだろうが…



「だから赤い雪を振らせた。きっと誰も私のことなんて覚えてるわけがないのに。」



でも私は何故この一連をまとめようと思ったのだろう…



「そして見込みのあるものへととり憑いて、様々なことを試した。」



赤い雪を振らせる張本人が赤い雪に思いを乗せたのだろうか。



「だが、適性があっても素質が無かったり、その逆もしかりだった。」



とにかく、見ていたものをそのまま伝えられるだけ伝えたいと思う。



「何十回も繰り返したが、見つからない。」



ただただ、誰も私に気づいてくれない中を漂い続けて。



「今回も…またやはりいるわけがないのか。

 でもこの奥義は絶対に無駄にしたくない。

 私は絶対にこの奥義を継承する。



 絶対に。」

















赤い雪 -Red Snow

















全てが始まる日の朝。

誰もが何も起こらない、起こるわけがないというような顔で目覚める。



赤い雪の張本人に選ばれるべき本人も。



「おーい氷夜いる?」

「ああまるもか。いませんよ。はっはっは。」

「なんだそりゃ、居るだろお前。まぁいいか。んで今日のことなんだけどどうするよ。」



たわいの無い会話。

きっとこの会話も今日で終わりを告げるのだろう。



氷夜 吼鬼。(ひょうやこうき



氷を使って様々な作品を作ってた親に影響されて自分も氷を使って様々なものを作っている少年らしい。



そしてその隣にいるのが円茂 一。(まるしげはじめ

通称まるも。



これを見ているということは消えるのはこの二人のどちらか…なのか?



「まぁあれは祭りであって祭りじゃないからな正直。」

「んでもって俺らにも関係ないし。まぁいいや。んじゃ今からどうするよ?」

「ああ、んじゃ本屋とか寄りながらその辺ぶらぶらしますかな。」



本当に…不憫だ。

たわいの無い会話をしてたわいの無い普通の友人と出かけて…

…その友人が…消える。



誰にも知られずに。



前回は…普通の女性が消えたはずだ。

その前は……もう覚えていない。



「なぁ」

「何?どこか寄りたいのなら別にいいけど」



「あれ…どうみてもロボだよな」



!!!

ロボット…?

これは今までには無かった。

いや、あるわけが無かったはずだ。



文明が進化したと言ったってこんな町でロボットがいるはずもなく…



そして、ロボットなんて回りにはあれしかいない。



「え…?どうしたんだ氷夜。ついにおかしく」

「いやそんなことないから。絶対にあれはロボだ!」

「こんな町にロボットがいるわけないだろ。何を言ってるんだお前は」

「とりあえず俺はあとをつける、先に本屋行っててくれ!」

「いやちょっとまて氷夜!俺もそっち行く!」



まさか…今回は…



何か、



考えられないようなことが、



赤い雪が降る日に、



起きてしまいそうな気が…







「…尾行されています。

 MAX-M、コード519のバージョンヴィジブルを展開してください。」



「Code 519 

 Ver. Visible



 ショウニン

 テンカイ」



「流石にMAX-Mが目立ちすぎなようですね…

 本部へメッセージを送信しておきましょうか。



 しかし…こんな普通の町で今夜何が起きるのでしょうか。」



ロボットと人が透明に…

っていうかまるっきり透明になるところ見られてるから完全に意味は無い。



「…何か声が聞こえる」

「声でかくないか?



 (コ゛ヌォコ゛ヌォ)



 …なるほど、まさにロボットだな!」



「…MAX-M、もういいです。

 完全にばれました。

 ヴィジブル解除して大丈夫です。」

「ショウニン



 カイシ゛ョ」

「…あなた達はこの町の住人ですか?

 そうだとすればいくつか聞きたいことがあるんですが…」

「まぁ一応そうだけど…

 っていうかなんでロボット連れて歩いてるんですか?

 しかもこんな何にもない町で…?」



何も無い町、か…



「あっはっは、あれですよ、あのなんか、そのあれですよ。

 あー、なんていうか…あ、あの懸賞とかなんとか言うあれですよ?(ウィー ぷしゅー がっさん」



何だ今の音。



(何で人が焦ってるのにロボット風な音がなったんだろう…)

「…まぁいいか。んで、聞きたいこととは如何に」



「如何に…?

(ローテ゛ィn)

 ああ、はい。

 そうですね、この町の伝説、神話、言い伝えなどがあったら教えてほしいんですが。」



(まさかこの人もロボ…)

(そんなわけない、どうみても人です、本当にありがとうございました)

「何かあったっけ?」

「いや、俺は良く知らないよ。」

「あってもなんかヘンな迷信くらいしかないよね?」

「どれ?あの毎月始めは川に近づくな引きずり込まれるって。

 あれはなんかダムがなんたらかんたらだろ?

 あとあれだ、天狗が飛び回るとか

 巫女さんが飛び回るとかなんとか」

「ああ、それもあったな、あとは



 赤い雪伝説、くらいか?」



…言い伝えとしては残っているのか。

それでもやはり冗談交じりで正確ではない。



だが、大筋は大体あっている。



私の他にも傍観するものはいたのだろうか。



「なんだそれ?

 全く聞いたこと無いわ」

「何か十年くらいに一度赤い雪が降る日があるんだってさ。

 んでもそんな赤い雪なんて見たこと無いよな。

 んでその赤い雪が降ると人が一人居なくなるんだと。」

「でも行方不明になった人なんていないだろ?

 なんだそれ?」

「あれ?神妙な顔してどうしたんですか?」

「…その、赤い雪が降るのが今日だとしたら…あなた達はどうしますか?」



…きっとこの人物は何かを知っている。

間違いは無いだろう。



「はっはっは、意味も無いただの脅かし話だって!」



「いや、あのなんというか、そのこういう神話をまとめるのを手伝ってるんですよ。

 それでここのことを調べろとか言われて現地に来たんですよ。」



「ほーぅ。なるほどう。」

「りゅういち。」



…気のせいだったのだろうか。



でも、この人物は何か…何かを絶対に知っている。



「…これ、ですか。」

「ホホ゛ セイカク

 モンタ゛イハ ナシ」

「あとは…その雪が降って、その中にある脅威を…」

「ケシサル、

 ソレノミ」

「そう。

 

 いいですか、私の相棒MAX-M、絶対に失敗はできない。

 解っている、いや、そうプログラミングされているのですから。

 それは私も同じ。…絶対に。」



「そして…ここは一体どこなんでしょうか、なんでロボットが迷うんでしょうか。

 なんですかこの一面何もない場所は、MAX-M、あれ、ちょっとMAX-M?」



「んで。本屋はもういいの?なんで?」

「いや。なんか暇つぶしの素材ができたようだからね」

「なんだそりゃ?」

「いや、ロボット置いて持ち主がどっかいったみたい」

「なんだそりゃ?」

「俺も正直なんだそりゃって感じだわ。

 まぁとりあえずさっきの人探してみようか」



「えーと、MAX-Mは一体どこにー?

 っていうかレーダー入らないー?

 ああ一人孤立で何もなしー?

 っていうかなんでロボットが迷うんでしょうか。」



「…とりあえず…ちょっといじってみようか」

「ライセンスid コート゛ヲ」

「なんだそりゃ?」

「さっきからなんだそりゃって言いすぎだお前」

「っていうか下手にいじったらそのー、なんかあるだろ絶対」

「っていうかさっきの人はどこ行ったんだよこれ」

「そうだ、このロボに話しかけてみようか



 さっきの人はどこにいる?」

「…OmUrAm…レータ゛ー ニ ハイッテ イマセン」

「…いまなんていったんだぜ?」

「だぜってなんだだぜって」

「今若者のことばずかい(なぜか変換できない)が乱れていますからねぇ」

「今のおまえとかな」

「なんだそりゃ」

「こっちのセリフだ」

「っていうかその…おうむる?」

「それはどこの耳の中にいる人ですか」

「ぼーくーさーつー」

「…OmUrAm…オゥルラム」

「オゥルラム…か」

「なんだそりゃ」

「そろそろうるさい」

「とりあえず持ち主…そのおうるらむさんを探すか」

「そうだな」



「あー、いたいた」

「おー、いたいた」

「…OmUrAm…レータ゛ーニハイリマシタ」

「ていうか…おぅるらむ?」

「あんまり似合わないな」

『っていうかただのこじつけだからな!試しにアルファベット後ろから読んでみな!』

「うわっ!誰だお前」

「何がどうした」

「いやなんか今ここにいた気がする、もっさりしたものが」

「まぁそれはおいといて」



「おーい…おぅる…らむ?さん!」

「自信なさそうにいうな」

「しょうがないじゃないか、さっきのもっさりとか凄く気になるし」

「全く…



 オゥルラムさん!ここにロボットがいますよ!」



「やっとレーダーに入ったよー

 どこだよー」



「OmUrAm…ハッケン」

「おーいMAX-Mー!ここだよー!



 ありがとうございました二人とも、…はは」

「いえいえそんな全然。」

「ちょっとロボットを近くで見れただけで十分ですよ」

「はは…

 MAX-M、OUA追尾マクロを開始してください」

「マクロ OUA run after」

「やっぱり凄いわ」

「…はは」

「そんじゃ俺たちはこの辺で。」

「また迷ったりしないでくださいね?では。」

「ありがとうございました。気をつけます」



「ふぅ、MAX?何時マクロ解除したんですか?」

「メッセーシ゛ ソウソンシ゛ ニ カイシ゛ョ サレマシタ」

「ああ、なるほど…」



他愛のない二人と訳のわからないことを呟く一人と一台…か。

これから、この二組はどうなるのだろう…

全ては…赤い雪の降る夜。それで何がどうなるのかが決まる。



そう。赤い雪は今夜降る。







「おい!氷夜!なんだあの雪は!」

「うるさい!今俺もそう思ってたとこだ!」

「あの赤い雪ってあれか!?あの伝説…っていうか伝説じゃないのかよ!」



十年周期がやってきた。



「雪が赤い?!」

「なんだこりゃ!」

「これは大ニュースだ!」

「すげぇえええええええ」

「とりあえずスレ立てよう」



誰も、今から起こることに気づかないまま。



「全くだ!俺も本当に起きるなんて思いもしなかったさ!」

「っていうか周りのやつら自重しろ!うるさい!」

「大体これは誰の仕業なんだよ!そして、



「「			一人が消える、それは一体誰になるんだよ!			」」



「ハモるな!」

「うるさい!」



過去の一連も傍観してきた私は今起きているこれをまとめることしかできない。



きっと、誰が張本人なのかはわからないだろうけど。



ただ知ってもそれを伝えることしかできない、いやそれさえ定かではない。



この一連はここから始まる。



それがどのようなものになるかは、張本人も、巻き込まれた者も、そして傍観するものも、知らないだろう。



ここから全てが始まる。



私はそれを傍観する、そして記憶する。



私のできることは、まだそれだけ…







赤い雪 -Red Snow 序章・終



赤い雪 -Red Snow 上章